第3講 統計的推定

フィッシャー情報量

フィッシャー情報量は次のように定義される.

In=E[(θlogf(x, θ))2]
また,次のようにしても求めることができる.
In=V[θlogf(x, θ)]=E[2θ2logf(x, θ)]
添え字の n は標本サイズを表わし,単にフィッシャー情報量というときは n=1 のときをいい, I1(θ) または I(θ) と表わすことが多い.ただし,文脈によって異なるので注意が必要である.

[証明]

l(θ, x)=logf(x, θ)
とおくと,
l(θ, x)=θlogf(x, θ)
よって,次のように書ける.
In(θ)=E[(l(θ, x))2]
ところで,f(x, θ) は密度関数であるから,
f(x, θ)dx=1,    θ
両辺を θ で微分すると,微分と積分の交換が保証されているという仮定の下で,
θf(x, θ)dx=f(x, θ)θdx=0
これより,
E[l(θ, x)]=logf(x, θ)θf(x, θ)dx=f(x, θ)θ1f(x, θ)f(x, θ)dx=f(x, θ)θdx=0
In(θ)=E[(l(θ, x))2]=l(θ, x)2f(x, θ)dx={l(θ, x)E[l(θ, x)]}2f(x, θ)dx=V[l(θ, x)]

ここで,対数尤度関数を二次微分してみる.

l(θ, x)=logf(x, θ)
l(θ, x)=θlogf(x, θ)=f(x, θ)θ1f(x, θ)
l(θ, x)=θ(f(x, θ)θ1f(x, θ))=2f(x, θ)θ21f(x, θ)+f(x, θ)θ(1{f(x, θ)}2)f(x, θ)θ=2f(x, θ)θ21f(x, θ)(f(x, θ)θ1f(x, θ))2=2f(x, θ)θ21f(x, θ)(θlogf(x, θ))2
よって,
(θlogf(x, θ))2=2f(x, θ)θ21f(x, θ)l(θ, x)
両辺に対して期待値をとれば,
E[(θlogf(x, θ))2]=E[2f(x, θ)θ21f(x, θ)]E[l(θ, x)]I(θ)=2f(x, θ)θ21f(x, θ)f(x, θ)dxE[l(θ, x)]=2f(x, θ)θ2dxE[l(θ, x)]
ところで,微分と積分の交換が保証されているという仮定の下で,
θf(x, θ)dx=0
であったので,
2θ2f(x, θ)dx=0
よって,
I(θ)=E[l(θ, x)]

確率変数 X1,,Xn が独立同一分布に従うときのフィッシャー情報量

X1,,Xn が独立同一分布に従うとき,

In(θ)=nI1(θ)

[証明]

fn(x, θ)=i=1nf1(xi, θ)
ここで,次のようにおく.
ln(θ, x)=logfn(x, θ)
l(θ, xi)=logf1(x, θ)
fn(x, θ) を両辺の対数をとり,θ で微分すれば,
θlogfn(X, θ)=θlogi=1nf1(xi, θ)
ln(θ, X)=i=1nθlogf1(xi, θ)
ln(θ, X)=i=1nl(θ, Xi)
よって, In(θ)=V[l(θ, x)] に代入すれば,
In(θ)=V[i=1nl(θ, Xi)]=nV[l(θ, X1)]=nI1(θ)
をとなる.

補足1: 別の証明

E[2θ2logf(x;θ)]    =(2θ2logf(x;θ))f(x;θ)dx    =(θf(x;θ)f(x;θ))f(x;θ)dx    =f(x;θ)f(x;θ)f(x;θ)f(x;θ){f(x;θ)}2f(x;θ)dx    =f(x;θ)f(x;θ){f(x;θ)}2f(x;θ)dx{f(x;θ)}2{f(x;θ)}2f(x;θ)dx    =f(x;θ)dx(f(x;θ)f(x;θ))2f(x;θ)dx    =2θ2f(x;θ)dx(θlogf(x;θ))2f(x;θ)dx    =2θ2f(x;θ)dx(θlogf(x;θ))2f(x;θ)dx    =2θ21(θlogf(x;θ))2f(x;θ)dx    =0(θlogf(x;θ))2f(x;θ)dx    =E[(θlogf(x;θ))2]