ベイズ統計学

局所一様事前分布の場合

ここで,前節の事前分布として局所一様事前分布を利用することを考える. 事前分布はフィッシャー情報量 I(θ) の平方根に比例するように定めればよいことがわかっている. このようにして事前分布を選べば,未知母数の変数変換に対しも局所的には一様な事前分布を定めることができる.

I(θ)=E[d2lnm(yθ)dθ2]
例えば,モデル分布としてベルヌーイ分布を考えると
I(π)=E[d2lnm(yπ)dπ2]=E[d2dπ2ln[πy(1π)1y]]=π1(1π)1
よって,事前分布 p(π) は,
p(π)I(π)=π12(1π)12
となり,ベータ分布の形をすることがわかる. このとき,ϕ=2lnπとすると,
p(ϕ)∝∣Jp(eϕ2)12eϕ4(1eϕ2)12,    0<ϕ<
これの分布は,ϕ の値が非常に小さい部分を除き,近似的に一様な分布である. さらに,比率の推定では,逆正弦変換と呼ばれる変換 ϕ=sin1π  (0<ϕ<π/2) が用いられることがある.
p(ϕ)∝∣Jp(sin2ϕ)∝∣sin2ϕ2(sinϕ)1(1sin2ϕ)12一定
このように,フィッシャー情報量の平方根に比例するように局所一様事前分布を選べば,変数変換を行っても,極端な値を除いて,広い範囲に渡たり近似的に一様性を持つ事前分布を定めることができる. これにより,事前分布の影響を最小限にしてほぼ尤度のみが事後分布を決めるようにすることができる. ただし,局所一様事前分布は積分しても1にならない擬確率分布(変則的分布)になる.