統計検定 準1級 過去問 解答/解答例と解説
2017年06月18日 (日) 試験

選択問題及び部分記述問題 問11

問題の要約
  • はじめに家と職場に 1 本ずつ傘を置く.

  • 雨が降っていてそこに傘があれば傘を持っていき,なければ仕方なく濡れて 行く.

  • Xn : n 回目の移動の出発時にその場所にある傘の本数

  • 降雨は移動ごとに独立

  • θ(0,1) : 降雨の確率 (一定値)

  • P(X1=1)=1

  1. Xn0,1,2 のいずれかの値をとるマルコフ連鎖.

    pij=P(Xn+1=j1|Xn=i1),  i, j=1,2,3

    P(X1=1)=1

    例) p11=P(Xn+1=0|Xn=0)=0 : 傘のない場所から移動した先には必ず傘がある

    推移確率行列 Q=(pij) を求めよ.

  2. Xn (n=1,,8) の同時確率関数

    P(X1=x1, , X8=x8)=P(X1=x1)i=17P(Xk+1=xk+1Xk=xk)

    実際に記録した結果

    X1=1, X2=1, X3=2, X4=0, X5=2, X6=1, X7=1, X8=1

    これをもとに計算した θ の最尤推定値はいくらか.

  3. XXX

解答
  1. 答 : ①

    Xn から Xn+1 への状態を整理すると次のようになる.このとき,各行の和が 1 になることに注意する.

    Xn+1=0 Xn+1=1 Xn+1=2
    Xn=0 0 0 1
    Xn=1 0 1θ θ
    Xn=2 1θ θ 0

    よって,状態遷移行列 Q は,

    Q=(00101θθ1θθ0)

  2. 答 :

    P(X1=1)=1
    P(X2=1X1=1)=1θ
    P(X3=2X2=1)=θ
    P(X4=0X3=2)=1θ
    P(X5=2X4=0)=1
    P(X6=1X5=2)=θ
    P(X7=1X6=1)=1θ
    P(X8=1X7=1)=1θ

    尤度 L は,

    LP(X1=x1, , X8=x8)=P(X1=x1)i=17P(Xk+1=xk+1Xk=xk)
    対数をとると,
    logL=logP(X1=x1)i=17P(Xk+1=xk+1Xk=xk)=logP(X1=x1)+logi=17P(Xk+1=xk+1Xk=xk)=logP(X1=x1)+i=17logP(Xk+1=xk+1Xk=xk)
    上の表の値を代入すると,
    logL=log1+log(1θ)+logθ+log(1θ)+log1+logθ+log(1θ)+log(1θ)=2logθ+4log(1θ)
    θ で微分して 0 とおくと,
    dlogLdθ=2θ41θ=2(1θ)4θθ(1θ)=26θθ(1θ)=0
    仮定より,θ0, θ1 なので,
    26θ=0
    よって,
    θ^=260.333

  3. 答 : ④

    十分長い年月が経過した後であることから,定常状態を考える.

    (abc)(00101θθ1θθ0)=(abc)
    この式の a を求めれば良い.計算すると,
    (c(1θ)b(1θ)+cθa+bθ)=(abc)
    {c(1θ)=a   (1)b(1θ)+cθ=b   (2)a+bθ=c   (3)a+b+c=1   (4)
    (1) より,
    c=a1θ   (5)
    (2) より,
    bbθ+cθ=b
     bθ+cθ=0
     b=c   (6)
    (6)(5) を代入すると,
    b=a1θ   (7)
    (3)(5)(7) を代入すると,
    a+a1θθ=a1θ
     (1θ)a+aθ=a
    これは解けない.(4)(5)(7) を代入すると,
    a+a1θ+a1θ=1
     a(1+11θ+11θ)=1
     a1θ+1+11θ=1
     a3θ1θ=1
     a=1θ3θ
    これに,θ0.333 を代入すると,
    a10.33330.3330.25