第4講 統計的検定

ネイマン・ピアソンの補題

検定関数 δ(x)

δ(x)=1 のとき棄却,δ(x)=0 のとき受容.

とする.ここで,帰無仮説,対立仮説とも単純仮説で,

H0 : θ=θ0
H1 : θ=θ1
の場合,次の形で与えられる検定の第一種の過誤の確率が α であれば, この検定は有意水準 α の中で一様最強力検定である.
δ(x)={1if  f(xθ1)f(xθ0)c0if  f(xθ1)f(xθ0)<c
ただし,
c0
とし,c
δ(x)f(xθ0)dx=α
を満たすように定められる.

XN(μ,12)
H0 : μ=μ0=0
H1 : μ=μ1 (>0)
のときを考える.それぞれの仮説の下での密度関数は,
f(xμ1)=12πexp[(xμ1)22]
f(xμ0)=12πexp[x22]
密度関数の比が c 以上の領域は,
f(xμ1)f(xμ0)=exp[xμ1μ122]c
よって,μ1>0 であることと,指数関数が単調増加であることから,棄却域は,
xc
となる.ここで,μ1 に依存していないことがわかる.c の値は次の式を満たすように定められる.
cf(xθ0)dx=α
f(xθ0) は標準正規分布であり,α=0.05 とすると c=1.645 であるので,棄却域は,
x1.645
この例のように,最良な棄却域は単純対立仮説で設定した値 (この例の場合はμ1) に依存しないこともある. このことは,
H0 : μ=μ0=0
H1 : μ>0
というように対立仮説を複合仮説にしたときにも,xc という棄却域が,任意の μ1>0 に対しても最良な棄却域となっていることを意味している.